減額慰謝料24時|実業家の妻、慰謝料1億円認められず!|

減額慰謝料24時!- 弁護士法人の運営する不倫・浮気の解決支援サイト

減額相談フリーダイヤル

0120-146-959
  • 平日:9:30~20:30
  • 土日祝:10:00~18:00

実業家の妻、慰謝料1億円認められず!

この裁判のあらすじ

【主な登場人物】
原告妻A:夫Bの日本の妻。相続額が0円だったことに憤慨。
夫B:韓国、日本をまたいで数多の女性との間に子供をつくった実業家。
被告C:夫Bの不貞相手。夫Bとの間に2人の子をもうける。
韓国妻D:夫Bの韓国に住む妻(昭和45年死亡)。
長女E:原告妻Aと夫Bの子。
二女F:原告妻Aと夫Bの子。
子G:夫Bと被告Cの子。夫Bの全財産を相続する。
子H:夫Bと被告Cの子。
長男I:夫Bと韓国妻Dの子(平成14年死亡)。

原告妻Aは,昭和21年1月に夫と婚姻し,長女Eと二女Fをもうけた。
夫Bは昭和32年8月,パチンコ店を出店することを計画,開店させ,昭和48年4月には株式会社を設立するなど事業を行ってきた。
夫Bは原告妻Aと婚姻前に,韓国妻Dと婚姻していたが,韓国妻Dは昭和45年に死亡。
夫Bは,昭和48年前後に日本に住む被告とは別の女性と男女の関係になり,子ももうけている。
同年,韓国においても夫Bと原告妻Aの婚姻届を提出している。
夫Bと韓国妻Dの間には長男Iがいたが,平成14年に死亡している。
夫Bと被告は,昭和60年ころから交際を開始して肉体関係を持つようになり,夫は,それ以降,ほぼ毎日,日中は被告宅を訪れ,夜には原告妻Aの居住する自宅に帰るという生活を続けていた。被告Cは,夫と知り合った当初から,夫Bが原告妻Aと婚姻関係にあることを知っていた。
夫Bは,いずれも被告Cの子であるGを昭和61年に,Hを平成2年に,それぞれ認知した。
夫Bはこれまで3度の公正証書遺言をしていたが,その都度原告妻Aの相続分は減少し,3度目の公正証書遺言においては完全に原告妻Aの相続分はなくなり,遺産の全てを被告の子Gに相続させる内容であった。
夫Bは,平成18年3月26日,死亡。
夫Bの死亡後,原告妻Aは被告Cに対して,1億円の慰謝料を請求する民事裁判を起こす。

  • 原告の言い分

    私と夫Bとは,60年以上の長きにわたって同居し,人生をともにしてきており,夫Bの最期も看取った。この間,離婚などという話は一切出たことはない。これまでも夫に愛人の存在を薄々感じていながらも,目をつぶってあげ,夫Bの好きにさせてあげていた。
    夫Bはこれまで無断外泊をしたことはなく,必ず帰ってきて就寝し,翌朝食事を妻とともにとり,家庭を守るという態度を一貫していたのは,夫婦関係が破綻していないことの何よりの証拠である。

  • 被告の言い分

    昭和60年頃,私に男子の跡取りを産んで欲しいと言われ,原告妻Aと離婚したら私と結婚すると約束したため,彼の子を出産した。
    私は長男Iやその孫達から,妻として認めらいて,彼らが日本に遊びに来た時は案内したり,夫Bの死亡した後も連絡を取り合うなど,私に信頼を寄せていた。
    私には資力がないのに1億円もの請求をしていることからすれば,私の子Hに渡った全財産の遺産の再分配が目的ではないか。
    韓国妻Dと婚姻中に原告妻Aとの間に長女と二女をもうけているのは,原告妻Aも不倫関係にあったのでは?

裁判所の判断と判決

20年もの長期の間,不倫を行い,さらに2人の子供を儲けたものの,婚姻生活が破綻に至ったとは認められず,またその事を知りながらも見逃していた点などを踏まえ,慰謝料の程度は500万円が相当で1億円の請求は認められない。

以下、判例全文

損害賠償請求事件

 

【事件番号】       東京地方裁判所判決/平成18年(ワ)第17580号

【判決日付】       平成19年7月27日

【判示事項】       原告が,約20年間にわたり被告が原告の夫(以下「亡夫」という)と不貞関係を継続してきたため,多大な精神的苦痛を被ったと主張して,被告に対し,不法行為に基づく1億円の損害賠償を求めた事案で,判決は,被告が亡夫に原告という妻がいることを知りながら,亡夫が死亡するまでの約20年間もの長期間にわたり,肉体関係をもち,亡夫が認知した二人の子がいることからして,原告は多大な精神的苦痛を被ったと認めることができるが,一方,亡夫死亡に至るまで同人と原告との婚姻生活が破綻に至ったとは認められず,本件に現れた全事情を考慮し,原告に認容すべき慰謝料額としては500万円が相当であるとした事例

 

主   文

 

1 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成18年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用はこれを20分し,その19を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。

4 この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

 

第1 請求

被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成18年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事業の概要

1 本件は,原告が,約20年間にわたり被告が原告の夫と不貞関係を継続してきたため多大な精神的苦痛を被ったと主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)として1億円及びこれに対する訴状送達の日である平成18年8月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

(なお,以下,人名については2度目からは名のみで表記する。)

2 前提事実(証拠を掲記しない事実は争いがない。)

(1)原告(大正15年○○月○日生(甲1))は,昭和21年1月30日,A(大正7年○月○日生(甲1))と婚姻し,長女B(昭和21年○○月○日生)及び二女C(昭和23年○○月○○日生)をもうけた。

(2)Aは,昭和32年8月,東京都葛飾区(以下略)にパチンコ店を出店することを計画して「D」を開店させ,昭和48年4月にはE株式会社(以下「E」という。)を設立するなど事業を行ってきた。

(3)Aは,原告との婚姻前,韓国において,Fと婚姻していたが,同女は,昭和45年3月3日,死亡した。

同年4月20日,韓国においても,原告とAの婚姻の届出がなされた。

AとFとの間には,長男G(昭和10年○○月○○日生)がいたが,同人は,平成14年9月21日に死亡した。(以上につき乙13及び14の各1~3)

(4)原告とAは,ともに韓国籍であったが,昭和48年4月6日,いずれも日本に帰化した。

(5)Aと被告は,昭和60年ころから交際を開始して肉体関係を持つようになり,Aは,それ以降,ほぼ毎日,日中は被告宅を訪れ,夜には原告の居住する自宅に帰るという生活を続けていた。なお,被告は,Aと知り合った当初から,Aが原告と婚姻関係にあることを知っていた。

(6)Aは,いずれも被告の子であるH(昭和61年○月○○日生)を昭和61年4月11日に,I(平成2年○月○○日生)を平成2年8月2日に,それぞれ認知した。

(7)Aと被告は,平成2年4月26日,被告の住所肩書地記載のマンション(1戸)(以下「本件マンション」という。)を共同で購入し,Aは,平成8年8月19日,被告に対し,本件マンションの亡Aの持分(6分の5)を被告に贈与した。

(8)Aは,平成15年7月9日,東京法務局葛飾公証役場において,大半の財産を原告が取得し,その余についても多くはBとCが取得して,HとIはEの株式等の8分の1ずつを取得するといった内容の公正証書遺言(以下「本件公正証書遺言1」という。)をした(乙11)。

(9)Aは,平成16年10月7日,東京法務局葛飾公証役場において,不動産の一部は原告が6分の3,B,C及びIが各6分の1ずつ取得するほか,その余の不動産とEの株式等はHが全て相続するといった内容の公正証書遺言(以下「本件公正証書遺言2」という。)をした(乙10)。

(10)Aは,平成17年7月29日,東京法務局葛飾公証役場において,遺産の全てをHに相続させる内容の公正証書遺言(以下「本件公正証書遺言3」という。)をした(甲13)。

(11)Aは,平成18年3月26日,死亡した。

3 争点

(1)原告とAとの婚姻関係破綻の有無

(2)原告の被告に対する本件慰謝料請求が権利濫用に当たるかどうか

(3)慰謝料額

4 争点に対する当事者の主張

(1)争点(1)(原告とAとの婚姻関係破綻の有無)について

(被告)

下記ア~エからすれば,遅くとも,被告がAと知り合った昭和60年ころには,原告とAとの婚姻関係は既に破綻していたことが明らかである。したがって,原告の被告に対する慰謝料請求は理由がない。

ア Aと原告は,もともと韓国籍であったが,儒教的価値観を守る男性中心の社会である韓国においては,男子の跡取りの出産が重視されている。しかし,原告は,昭和23年12月に二女を出産後,Aに内緒で不妊手術をして同人の怒りを買い,原告とAとの関係は疎遠になっていった。また,後に原告が子宮癌に罹患して子宮の手術をしたことにより,男子の跡取りの出産は困難となった。

そして,Aは,昭和48年前後に日本に住む被告とは別の女性と男女の関係になり,子ももうけている。

したがって,昭和50年前後には,Aと原告との夫婦関係は完全に破綻していたものである。

イ Aは,被告と知り合った昭和60年ころ,被告に対し,原告が胃癌で余命3か月と宣告されたため,被告にAの男子の跡取りを産んで欲しい旨述べ,原告との婚姻関係が終了した後には被告と結婚する旨約束をしたため,被告は,亡Aと男女の関係に入り,Hを妊娠・出産した。その後も亡Aは,原告との間で離婚の話を重ねたが,原告は,原告も亡Aも60歳台であってどちらかの死亡により婚姻関係が解消される可能性が高いと考え,亡Aが死亡するのを待っているような状況にあったことから,離婚には応じなかった。

ウ Aは,本件公正証書遺言3より前に2度公正証書遺言をしていたが,その都度原告の相続分は減少し,本件公正証書遺言3においては原告の相続分はなくなった。これは,Aと原告との婚姻関係破綻を証するものである。

エ 被告は,Aが韓国で婚姻していたFとAとの子や孫ら親族(以下「韓国の親族」という。)から,事実上妻として認められており,同人らが来日の際はAとともに案内をした。また,被告が韓国の親族らからAの死亡後にその消息を尋ねられるなど,韓国の親族らは原告ではなく被告に深い信頼を寄せていた。

オ 原告は,Aの死亡後,3か月以上も納骨をせず,A家の墓がある寺に連絡すらしていなかったが,このことは,原告とAの生前の夫婦関係が相当以前から破綻していたことをうかがわせる事実である。

(原告)

原告とAとは,昭和21年1月の婚姻後,60年以上の長きにわたって同居し,人生をともにしてきており,原告はAの最期も看取った。この間,離婚などという話は一切出たことはない。Aは,婚姻中に外に愛人をつくりながら,一方で家庭も壊さずに維持することが大切と考えて努力してきたものであり,原告は,Aが家庭を蔑ろにすることなく,生涯を通じて妻である原告を守り通してきたので,これまでも愛人の存在を薄々感じていながらも,Aの好きにさせて,愛人の存在を無視していたに過ぎない。

Aは,いわゆる無断外泊をしたことはなく,必ず夜は原告のもとに帰ってきて就寝し,翌朝食事を原告とともにとり,家庭を守るという態度を一貫していた。これは原告とAとの夫婦関係が破綻していないことの何よりの証左である。

原告がAの納骨を留保していたのは,原告が被告に対して要求していたHとIのDNA鑑定のために必要となることを慮ってのことである。

(2)争点(2)(原告の被告に対する本件慰謝料請求が権利濫用に当たるかどうか)について

(被告)

次の事情を総合すれば,原告の本訴請求は権利濫用というべきである。

ア 原告がAと被告との関係を知りながらそれを20年間容認してきたこと

原告は,被告がHを出産後,被告のもとを複数回訪れ,「こんな子は不良になる」などと大声で怒鳴ったり,また,Hが商店街を小学校への通学のために歩いているときに何度か大声で怒鳴りつけたりしたことがあったし,Iが原告の自宅にかけた電話をAに取り次ぐことがあったことなどからして原告はHやIの存在を知っていた。また,原告とAの長女Bは,Hが平成12年8月に野球の遠征で渡米した際,ホームステイ先に対する手紙を書くなどしており,被告を受け入れていた。そして,被告は,平成13年12月から平成17年2月までの間,かつてAが代表者を務め,現在は原告が代表者を務めるEの監査役に就任していた。さらに,本件公正証書遺言3がなされた後になって,Aが所有していた不動産に関し,原告やBに対する贈与やEに対する売買が行われている。これらからすれば,原告は,Aと被告との関係を20年前から知っていたことは明らかである。しかるに,原告は,被告に対し,これまで全く慰謝料請求をしたことはなく,Aと別れるよう被告に訴えたこともなく,容認していたのである。

イ 原告とAとの夫婦関係は昭和50年ころには既に破綻していたこと

前記(1)(被告)欄記載のとおり。

ウ 本件が1億円という高額の慰謝料請求であり,これは全財産をHに相続させる旨の本件公正証書遺言3を踏まえ,遺産の再分配を目的としてなされたものであること

前述のとおり,原告やBらがAが死亡する約3か月前に自宅等の贈与を受けるなどし,また,Eの株式も生前に譲り受けていることからすれば,これらは,原告らが本件公正証書遺言3の存在を知り,全財産をHに相続させることを阻止すべく行ったものと認められること,原告がAの死亡後半年近く立っても韓国の親族らに対してA死亡の事実を隠すなどしていること,被告には到底そのような資力がないのに1億円もの高額の本訴請求をしていることからすれば,原告の本訴請求は,遺産の再分配を目的とするものというべきである。

エ 被告が韓国の親族から事実上妻として認められていたこと

前記(1)(被告)エ記載のとおり。

オ 原告にも不貞関係の疑いがあったこと

韓国の戸籍上,Aは,昭和10年にFと婚姻しているが,Fが昭和45年3月3日に死亡するまで同女と離婚したという記録はない。一方,原告は,日本の戸籍上,昭和21年にAと結婚し,昭和21年12月にBを,昭和23年12月にCをそれぞれもうけており,韓国の戸籍上,Fの死亡後である昭和45年4月20日にAと婚姻したものとされている。こうした日本及び韓国の戸籍上の記載にかんがみれば,原告は,昭和21年1月30日当時,Aに配偶者がいるにもかかわらず,Aと男女の関係になって,B及びCをもうけたものであって,原告自身もAと不貞の関係にあった可能性がある。

(原告)

ア 原告は,愛人の存在をうすうす感じていたが,これを容認していたわけではない。被告の住所,氏名等を具体的に特定して知ったのは,本件公正証書遺言3があることを知らされてからが初めてである。原告がAに対して愛人と別れるよう求めなかったのは,Aが死亡するまで原告のことを守っていたからであり,原告は多少のことには目をつぶってAの好きにさせていたに過ぎない。

イ 被告がAに本件公正証書遺言3を作成させたことにより,Aの妻としての原告の精神的苦痛は極限まで達したことや,本件公正証書遺言3が実際に原告の妻としての共有持分までも侵害する内容となっていることからすれば,原告が1億円の損害賠償請求を行っていることには相当性がある。

ウ 原告とAは,日本で知り合ったのであり,当時靴職人として活躍していたAは,十四,五歳で大阪に出てきて夜学に通っていたと述べていたものであって,韓国での前妻の話など全くしなかったから,原告は,Aが韓国で婚姻歴があるなどということは夢想だにしていなかった。

(3)争点(3)(慰謝料額)について

(原告)

原告は,約20年の長期にわたり,被告(ただし,具体的に被告がAの愛人であるとの認識はなかった。)とAとの愛人関係の継続に耐えてきたが,次に述べるような事情も勘案すれば,被告がAと不貞関係を続けたことにより原告が被った精神的苦痛は,1億円を下らない。

ア 昭和60年以降,Aの帰宅が遅くなり,朝帰りが続くなど私生活に変化が見られるようになったものの,原告はAを信頼していたこともあって,あまり目くじらを立てずにじっと耐えてきたが,商店街の知人間において亡Aに愛人がおり,しかも隠し子がいるという噂や風評が立てられたことによって,非常に長い期間,精神的に傷つけられてきたこと

イ Aが被告の子2人を認知していること

ウ Aが,被告と共同で本件マンションを購入し,その後持分を被告に贈与していること

エ Aが約20年間の長期にわたり,被告の居住する本件マンションに連日のように通い続け,この間,毎月の生活費として少なくとも月額50万円を被告に交付し続けており,その合計額は1億円を下らないこと

オ Aがその経営していたEの経営に悩み精神的に不安定な状態であった平成17年7月初旬において,被告がAの財産の奪取を企図し,Aの全財産を被告の子であるHに相続させる旨の本件公正証書遺言3を作成させ,原告がAと長年連れ添った本件自宅までも奪い取ろうとしていること

(被告)

原告に損害が発生したことを含め全て争う。

被告がAから受領していたのは月額35万円であり,これは,H及びIの養育費相当額であるに過ぎない。

また,本件公正証書遺言3は,AがHを跡取りと考えていたこと,一方で,Aと原告との夫婦関係が既に昭和50年ころには破綻していたこと,長女のB夫婦は破産し,Aがその子の学費や入院費等で金銭的な援助は十分にしてきたこと,Aは二女のCとはけんかが絶えず,暴力もふるわれたために同人には財産を相続させたくないと考えていたことから,A自身がその意思に基づき作成したものである。

第3 争点に対する当裁判所の判断

1 争点(1)(原告とAとの婚姻関係破綻の有無)について

(1)前記前提事実によれば,被告は,Aが原告と婚姻関係にあることを知りながら,昭和60年ころからAとの交際を開始して肉体関係を持つようになり,以後Aが死亡するまで,そうした交際を継続してきたことが明らかである。したがって,原則として,被告には,原告に対する不法行為が成立する。

(2)もっとも,被告は,①韓国では男子の跡取りが重視されるのに,昭和23年12月にCを出産後に原告がAに無断で不妊手術をしたためにAが怒って原告との仲が疎遠となったこと,②原告が子宮癌に罹患して子宮を摘出したことによって以後子を産むことができなくなったこと,③昭和48年ころにはAが別の女性と関係を持って子をもうけていたこと,④Aが被告に男子の跡取りを産むことを希望し原告死亡後は結婚する旨約したため被告がAと交際を開始するに至ったこと,⑤Aは原告と離婚の話を重ねたが原告が応じなかったこと,⑥Aが公正証書遺言をする都度原告の相続分は減少し,本件公正証書遺言3においては原告の相続分がないものとされたこと,⑦原告がAの死亡後3か月以上もの間納骨しなかったことなどからして,被告がAと交際を開始した当時には,既に原告とAとの婚姻関係は破綻に至っていた旨抗弁するので,この点につき検討する。

まず,①については,原告が不妊手術をしたと認めるに足りる的確な証拠はないが,仮にそうした事実があったとしても,それより後の昭和45年にはAと原告が韓国においても婚姻届出をしていることからして,それにより原告との仲が疎遠となったなどとは認められない。⑤についても,Aと原告との間で離婚の話合いがなされたと認めるに足りる的確な証拠はない(原告は,Aと離婚の話などなかった旨供述している。)。

一方,前記前提事実及び証拠(乙23,原告本人,被告本人)によれば,②~④,⑥,⑦の事実が認められ,④についてもその旨被告が供述しており(乙23,被告本人),そのようなことがあってもおかしくはないとは考えられる。

しかしながら,平成15年から16年にかけて,多くの財産を原告に相続させる内容の本件公正証書遺言1はもちろん,本件公正証書遺言2においてさえも,原告にも相当程度の財産を相続させるものとされていることは,少なくともその当時まで原告とAとの婚姻関係が維持されていたことを強くうかがわせるものであるし,何よりも,Aが,被告との交際開始後も,その後昭和61年にCが結婚して家を出て(甲2,乙12,原告本人。なお,Bは昭和47年に結婚している(乙12)。),原告とAとの2人暮らしとなってからもずっと,夜には原告の待つ自宅に帰っており(これは,本件公正証書遺言3以降も続いていた。),結局自宅で原告に看取られて亡くなっていること(前記前提事実(5),原告本人,弁論の全趣旨)からすれば,そこには原告との婚姻関係を維持するというAの強い意思を看取することができるところである。原告も,A死亡までずっと婚姻関係が維持されていた旨述べている(原告本人)。

そうすると,被告がAと交際を開始した当時,既に原告とAとの婚姻関係が破綻に至っていたなどとは認めることができないものというべきである。

よって,この点の被告の主張は理由がない。

2 争点(2)(原告の被告に対する本件慰謝料請求が権利濫用に当たるかどうか)について

(1)この点に関し,被告は,原告がAと被告との関係を知りながらそれを20年間容認してきた旨主張する。

そこで検討するに,まず,被告とAとの交際が昭和60年ころから始まったものであること,しかもAは,日中は被告宅に通い,夜は原告と住む自宅に帰るということをほぼ毎日繰り返していたこと,原告の自宅と被告宅とが同じ町内等の近所であることなどに加え,被告が,Hが幼いころ,葛飾区奥戸に住んでいた被告の自宅まで来たことがある等の具体的な供述をしていることなどからすれば,被告の名,前も顔も知らなかったとする原告の供述にかかわらず,原告は,少なくともかなり以前から被告のことをAの交際相手として特定して認識していたものと推認するのが相当である。そして,上記のようにAは,原告との自宅と被告宅とを毎日行き来するような生活を約20年にわたり続けていたことからして,Aのいわば二重生活ともいうべき状態が久しく安定した状態にあったことがうかがわれる。また,少なくとも本件公正証書遺言3について知悉するまでは,被告に対して慰謝料を請求するようなことは考えていなかったというのである(甲14,原告本人)。

しかしながら,韓国人の民族性などを理由としつつ,原告がこうした生活に耐えてきた旨述べている(甲14,原告本人)とおり,これらは,原告が,原告とAとの婚姻関係の安定のためにも,むしろAと被告との関係をやむなく黙認していたにすぎないものと見るのが合理的であって,それ以上に原告がAと被告との関係を積極的に容認していたなどとは解しがたいものというべきである。

したがって,この点をもって原告の本訴請求が権利の濫用であるということはできない。

(2)また,被告は,原告の本訴請求が,本件公正証書3を踏まえ,遺産の再分配を目的とするものである旨主張する。

確かに,本件公正証書3の内容を知ったことが原告の本訴請求の動機となっていることは,原告自身明言するところであるが(甲14,原告本人),被告の子であるHにAの遺産の全てを相続させる旨の本件公正証書3の内容を知って,前記(1)のとおり原告がこれまでやむなく耐えてきたAと被告との関係につきもはや耐えきれなくなり,原告とAとの婚姻関係の維持をもはや考える必要がなくなったAの死後において,被告に不法行為としての責任追及を行うというのは,原告の心情として理解し得ないものではない。そうすると,たとえ原告がAの遺産の再分配をも考えるものだとしても,これをもって本訴請求が権利の濫用に該当するとまでは解しがたいものというべきである。

(3)被告は,原告がAと婚姻する際に,原告自身がAと不貞の関係にあった可能性があることも,原告の本訴請求が権利濫用に当たることの根拠として主張している。その趣旨はいささか判然としないが,原告がAとの婚姻時に同人の韓国における婚姻関係について知っていたと認めるに足りる証拠は何もなく,原告は,少なくとも日本においてはかねてAの妻として法律上保護されるべき地位にあったというべきであるから,この点の被告の主張はその前提を欠くものである。

(4)さらに,これらに加え,被告がその他るる主張する事項をも併せて総合的に考慮しても,原告の本訴請求が権利濫用に当たるとは認められないから,この点の被告の主張は理由がない。

よって,被告は,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。

3 争点(3)(慰謝料額)について

被告が,Aに原告という妻がいることを知りながら,Aと肉体関係を持つに至り,昭和60年ころ以降,Aが死亡するまでの約20年間もの長期間にわたり,Aが毎日被告宅に通うようなかたちでAとの関係を継続し,その間に被告はAが認知した2人の子ももうけていること,被告の住居は原告の自宅と同じ町内ないしは近隣であったこと,そうしたことから原告は愛人や隠し子がいるなどといった風評にも悩まされたとうかがわれること(甲14)などからすれば,原告は,多大な精神的苦痛を被ってきたものと認めることができる。

一方,A死亡に至るまで同人と原告との婚姻生活が破綻に至ったとは認められず,Aとの信頼関係を強調する原告の主張・供述(甲14,原告本人)からしても原告は,Aのことは宥恕しているものと解される。

こうした諸事情も含め,本件に現れた全事情を総合考慮し,さらに,本訴提起よりも前に原告が被告に対して本件に係る慰謝料請求をしたと認めるに足りる証拠はないので,原告の被告に対する慰謝料請求権のうち,本訴提起の日である平成18年8月11日から20年前である昭和61年8月11日より前の分は除斥期間の経過によりもはや行使し得ないものと解されることからすると,結局,原告に認容すべき慰謝料額としては,500万円が相当である。

4 よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第35部

裁判官  三井大有

慰謝料の減額はアドバンスまでまずは気軽にご相談下さい!

0120-146-959
  • 平日:9:30~20:30
  • 土日祝:10:00~18:00
メールによるご相談はこちら

ケータイからも相談OKモバイルサイトはこちら

人気記事ランキング
  1. バナナマン日村と女子アナ神田愛花の恋に横槍!恋愛を妨害したら慰謝料を請求される!?
  2. 石田純一のドタバタ出馬問題で家族も大迷惑!?夫の奇行で離婚となった場合の慰謝料は高くなる?
  3. スザンヌと斉藤和巳が離婚。週刊誌の報道記事は浮気の証拠になる!?
  4. 不倫相手の夫を銃撃!実刑14年、慰謝料3200万円!?
  5. ヒロミに浮気疑惑!?松本伊代の勘違いだった。
  6. 続、愛之助騒動!!藤原紀香の略奪愛!?同棲相手を奪い取ったら慰謝料請求されるのか?
  7. 狩野英孝、八面六臂の大浮気!社会的制裁を受けていない場合の慰謝料は!?
  8. 出世男テンプレ通りの展開!?長谷川博巳、鈴木京香同棲解消で考える、長期間の同棲は慰謝料の対象になるか?
  9. 【不倫 x 覚せい剤】もしも高知東生が高島礼子と離婚になった場合の慰謝料はどうなる!?
  10. 包丁妻、夫の不倫相手に1000万円の慰謝料を請求するも認めらず!
0