減額慰謝料24時|慰謝料の相場 – 金額はどのように決まるか?|

減額慰謝料24時!- 弁護士法人の運営する不倫・浮気の解決支援サイト

減額相談フリーダイヤル

0120-146-959
  • 平日:9:30~20:30
  • 土日祝:10:00~18:00
慰謝料の相場 – 金額はどのように決まるか?

慰謝料の相場 – 金額はどのように決まるか?

芸能人が多額の慰謝料を支払ったというニュースが出ることがありますが,芸能人は資力があることからお互いが納得する金額も高額となりますが,実務における慰謝料の金額は,「相場」によって決まることが多いといえます。

「相場」とは,裁判所が判決を下す金額が基準になります。

おおよそ,50万円から300万円くらいの幅で判決が出ることが多く,交渉においてもこのような範囲で慰謝料の金額が決まることが大多数です。

慰謝料の金額を決める事情として,①不貞行為が離婚の原因となったか否か,②婚姻期間,③不倫相手との交際期間,④交際の内容,⑤年齢,⑥不倫を主導したか否か,⑦反省の有無,➇当事者の社会的地位,⑨金銭の贈与の有無等が挙げられます。

例えば,不倫をした男性の場合で,①不倫がばれたことにより離婚した,②結婚30年目,③交際期間25年,④不倫相手と家を構え2日に1回は会っていた,⑤男性の方が年上,⑥男性が積極的に不倫を主導していた,⑦反省していない,➇会社の社長,重役,公務員,有名人等,⑨大金を貢いでいた,といった場合は,慰謝料が非常に高額になります。

高額の慰謝料を認めた事例として,婚姻期間が30年と長く,夫婦で購入した海外の別荘に不倫相手と同棲し,その後,妻に対する暴力等で婚姻関係が完全に破たんして,1000万円という高額の慰謝料を認めたものがあります(東京地裁平成17年5月30日判決)。※2

他に,婚姻期間が8年,夫が二人の女性と不倫し,妻に対する暴力等で婚姻関係が完全に破たんして,1000万円という高額の慰謝料を認めたものがあります(横浜地裁昭和55年8月1日判決)。※3

これらの高額の慰謝料が認められた背景には,不貞の内容が悪質であることのほかに,夫が多くの資産を所有していたことが大きく影響していると考えられます。

しかし,上述のような慰謝料は例外的で,近年,裁判所が高額な慰謝料請求を認めることについては消極的です。

不倫相手との交際期間が20年と長い場合でも,300万円程度の慰謝料にとどまった事例があります(大阪地裁平成11年3月31日判決)。※4

※2 東京地方裁判所 平成15年(タ)第736号、平成15年(タ)第921号 離婚等請求事件、財産分与等反訴請求事件 平成17年5月30日

離婚等請求事件、財産分与等反訴請求事件

 

【事件番号】            東京地方裁判所判決/平成15年(タ)第736号、平成15年(タ)第921号

【判決日付】            平成17年5月30日

【判示事項】            原告(妻)は,被告(夫)が不貞行為をし,原告に暴力を振るうなどしたため,婚姻関係が破綻したとして,離婚,慰謝料(3000万円)及び財産分与を求めたのに対して,被告が,婚姻関係は原告の責任により破綻したとして,慰謝料(1000万円)及び財産分与を求めた事案。判決は,原告の請求中,離婚請求は理由があるから認容し,慰謝料請求については被告に対し1000万円の限度で認容し,被告の慰謝料請求は理由がないから棄却し,財産分与として,被告から原告に対し,不動産の被告の持分等を分与し,原告から被告に対し,海外不動産の原告の持分を分与することとした。

 

主   文

 

1 原告と被告とを離婚する。

2 被告は,原告に対し,金1000万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3(1)被告から原告に対し,別紙物件目録1及び2記載の土地及び建物について,被告の有する各持分3分の1,並びに被告名義のA有限会社(東京都江東区〈省略〉,代表者B)出資口数250口を分与する。

(2)被告は,原告に対し,上記土地及び建物の各持分3分の1について,財産分与を登記原因とする所有権移転登記手続をせよ。

(3)被告は,原告に対し,上記出資口数250口について,名義変更手続をせよ。

(4)原告から被告に対し,別紙物件目録3記載に所在する土地及び建物について,原告の有する各持分を分与する。

4 原告のその余の請求を棄却する。

5 被告のその余の反訴請求を棄却する。

6 訴訟費用は,本訴反訴ともに,これを5分し,その1を原告の,その余を被告の各負担とする。

 

事実及び理由

 

第1 請求

1 本訴

(1)(離婚)

主文1項と同旨

(2)(慰謝料)

被告は,原告に対し,金3000万円及びこれに対する平成14年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3)(財産分与)

ア 被告は,原告に対し,別紙物件目録1及び2記載の各不動産について,被告の有する各持分を分与し,かつ,財産分与を原因とする各持分権移転登記手続をなす。

イ 被告は,原告に対し,被告名義のA有限会社(東京都江東区〈省略〉,代表者B)出資口数250口を分与し,かつ,名義変更手続をなす。

ウ 被告は,原告に対し,金2000万円を分与する。

エ 被告は,原告に対し,金2000万円及びこれに対する本判決確定の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 反訴(慰謝料及び財産分与)

原告は,被告に対し,金1億1000万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日から支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 本件は,原告(妻)が,被告(夫)が不貞行為をし,原告に暴力を振るうなどしたため,婚姻関係が破綻したとして,離婚,慰謝料(3000万円)及び財産分与を求めたのに対して,被告が,婚姻関係は原告の責任により破綻したとして,慰謝料(1000万円)及び財産分与を求めた事案である。

なお,原告と被告は,それぞれの預貯金について財産分与の対象としないことを合意している。

2 前提事実(括弧書きした証拠及び弁論の全趣旨により認められる。)

(1)原告(昭和**年*月*日生)と被告(昭和**年*月*日生。旧姓・**)は,昭和50年3月11日,婚姻の届出をした夫婦である(甲1)。原告と被告は,ともに再婚であり,その間に子供はいないが,被告と先妻との間に2人の娘がおり,同女らは,平成10年にそれぞれ婚姻し,独立して生活している。

(2)原告は,昭和34年に大学を卒業した後,前夫と結婚し,昭和36年に前夫とともに実父・Cが昭和21年に設立したD株式会社(本店所在地・東京都港区〈省略〉。以下「D」という。甲3)に入社した。昭和48年,原告は,前夫と離婚し,そのころ,Dは,本業であった電気工事業をやめ,不動産賃貸管理業(貸ビル業)を本業とするようになった。そして,昭和49年7月にCが死亡したため,一人娘であった原告が後継者として,Dの代表取締役に就任し,現在に至っている。

(3)被告は,昭和34年に大学を卒業した後,E株式会社に入社し,他社への転職を経て,昭和49年6月にDに入社し,昭和50年1月に,Dの取締役に就任し,昭和51年1月に,原告と結婚したことから,原告とともに代表取締役に就任した。そして,被告は,原告の意向で,同社を退職するまで,原告と同額かそれより多額の役員報酬を受けていた。

(4)原告と被告は,平成3年,オーストラリアのゴールドコーストに別荘として別紙物件目録3記載に所在する土地建物(以下「海外不動産」という。)を共同で取得し,年に3,4回夫婦で渡航していたもので,原告は,Dの経営のため,1回の滞在期間は20日間程度が限度であったが,被告は,年間約3分の1以上はオーストラリアに滞在するようになった。

(5)原告と被告は,平成8年3月28日,自宅として,別紙物件目録1及び2記載の各不動産(建物は,昭和53年12月新築。以下「本件不動産」という。)を購入し,持分原告3分の2,被告3分の1の所有権移転登記を経由した(甲4の1・2)。

(6)被告は,平成11年12月,原告に対し,オーストラリアから,被告が旧姓に戻りたい旨,原告が離婚を望むなら書類を送ればサインして送り返す旨のファックスを送信してきた。

(7)被告は,平成13年9月ころ,オーストラリアでFと知り合い,オーストラリアに滞在中,その別荘で同棲していたが,原告は,これを知らなかった。

被告は,平成14年4月ころ,原告に対し,「4/15迄に更新または新規に作ると定期金利を0.2%上乗せすると書いてある。何をどうするか,したいのかFAXせよ。その通り手続して,書類は日本に郵送する。今回は長期10月迄帰国せずの別居となるので。」との手紙(メモ)を送付してきた(甲5)。

原告は,同年5月26日,オーストラリアの別荘に行き,被告とFが同棲していることを確認し,被告は,Fとの不貞行為を認めた。

(8)平成14年7月に被告が帰国した後,原告と被告との間で離婚の話し合いをしたが,進展がなかった。

(9)被告は,平成14年12月19日,原告住所地(本件不動産所在地)から東京都江戸川区〈省略〉**方に住所変更届出をした(甲2の2)。

(10)被告は,平成15年1月29日,Dの(代表)取締役を退任した(甲17)。

(11)原告は,平成15年2月,夫婦関係調整の調停を申し立てた(東京家庭裁判所平成15年(家イ)第1088号)が,同年7月28日,調停は不成立となった(甲9)。

(12)被告は,昭和54年7月,G株式会社を設立し,代表者取締役となり,その後,昭和63年10月に死亡した亡父・Hから相続した不動産の管理をすることとし,株式会社G′と商号変更し,その代表取締役をして,現在に至っている。

(13)A有限会社(東京都江東区〈省略〉,代表者B(Cの後妻)。以下「A」という。)の出資5000口について,昭和49年,Cの死亡により,原告が4750口,Bが250口を相続により取得したところ,平成6年12月21日,Bの出資250口につき被告名義にされた。

(14)Dの平成14年11月30日現在の貸借対照表によれば,剰余金合計が4億2987万1095円とされている(甲61の1・2)。

なお,被告が提出したDの決算報告書写しには,上記剰余金が4億2983万8395円とされている(乙2)。

3 原告の主張

(1)離婚原因

ア 被告は,Fと同棲,不貞行為をし,これが発覚して,原告の被告との間の婚姻関係は破綻した(民法770条1項1号)。

イ 被告は,平成15年3月25日,原告を足蹴りにし,右鼡径・大腿近位部及び左膝挫傷の傷害を負わせ,さらに,「人殺し」,「泥棒」,「俺の給料を返せ」,「株を返せ」等と暴言を吐くなどした。

ウ 原告と被告との婚姻関係は,被告の不貞行為及び暴力・暴言等による婚姻を継続し難い重大な事由により破綻した(民法770条1項5号)。

(2)慰謝料

原告は,長年にわたり,被告に高額の取締役報酬を送金し,会社経営を担い,固定資産税は一切(被告の持分の分も),生活費もすべて原告が負担し,かつ,家事一切を担い,夫に尽くしてきたにもかかわらず,被告の不貞行為及び暴力・暴言等により心身ともに深く傷つけられたので,これを慰謝するには,3000万円を下らない。

(3)財産分与

ア 原告と被告が婚姻中に形成した財産として,共有の本件不動産及び海外不動産並びに被告名義のAの出資金がある。

なお,被告名義のDの株式4000株は,名義株で,実際の株主は亡夫Cから相続した原告であり,財産分与の対象とならない。

イ 本件不動産について

本件不動産の取得費用は,合計2億4516万4710円(売買代金等2億2139万8000円,不動産取得税505万7100円,造作・改修工事費用等1443万9110円,固定資産税。都市計画税427万0500円)であり,被告は,その持分相当の購入資金7380万円のうち,自己の預金等から支払ったのは2200万円であり,1500万円はDより貸付金返済の形をとり(原告の負担),3000万円はDからの借入金,680万円はDからの未払給与の支払金であり,これらの原告の寄与の割合は,2分の1であるから,被告の負担分は4040万円となる。そして,原告の負担分はその余の2億0476万4710円であるから,実質の持分割合は,原告が83.52%,被告が16.48%となる。

仮に登記簿上の持分を前提としても,被告の3分の1の持分に対する原告の寄与の割合は2分の1とみるべきであるから,被告の実質的持分は16.67%となる。

本件不動産の評価額は,1億5578万円であり,被告の持分相当額は,2567万2544円となる。

ウ 海外不動産について

海外不動産は,原告と被告の共同出資による共有財産であり,その持分割合は各2分の1である。

仮にそうでないとしても,原告は,海外不動産の取得のために,購入費用3556万8263円及び内装費,家財道具等1169万3700円(11万6937豪ドル)の合計4726万1963円を支払っており,被告は1億2000万円を負担しているから,実質的持分割合は,原告が10分の4,被告が10分の6となる。

海外不動産の評価額は,1億2297万6000円であり,原告の持分相当額は,4919万0400円となる。

エ A出資金について

Bは,その死後,Bの子が相続して原告と紛争になるのを避けるため,平成6年12月21日,B名義のAの出資250口を被告に贈与し,原告が贈与税を支払った。

上記250口の評価額は,267万6750円(1口1万0707円)である。

オ Dについて

Dの剰余金は,法律上も税務上も夫婦の財産ではないから,財産分与の対象とならない。

また,被告は,Dにおいて,実質的にはほとんど仕事をしておらず,その働きと比較して不相応な多額の役員報酬が支払われている。仮に被告が主張するような事実があったとしても,それは会社の取締役としての忠実義務の範囲内の当然の行為にすぎず,取締役報酬によって対価が払われているものであるから,財産分与の問題にならない。

カ 婚姻費用について

原告は,被告との婚姻生活中,自宅の改築費をはじめ,固定資産税等は被告の持分の分についても負担し,食費,光熱費等の生活費,婚姻費用をほぼすべて負担していたので,原告の寄与が認められるべきである。

キ 分与の方法

本件不動産は原告の,海外不動産は被告の各単独所有となるように,各自の持分を互いに分与するのが相当であり,また,Aの出資250口を被告から原告に分与すべきであるから,その差額約2000万円を被告が原告に分与すべきである。

4 被告の主張

(1)離婚原因

ア 原告と被告との夫婦関係は,被告の先妻との間の2人の娘に対する原告のやきもちが導火線となり,平成10年12月ころ(遅くとも平成11年12月)には破綻するに至ったものであるから,その後に被告がFと男女関係を持ったことは不貞行為にはならない。

イ 被告は,怒鳴ったことはあるが,原告に対し暴力を加えていない。

(2)慰謝料

ア 被告は,原告に対する不貞行為及び暴行等をしていないので,慰謝料支払義務はない。

イ 被告の2人の娘が平成10年に相次いで婚姻したころから,原告は娘2人にやきもちをやくようになり,原告と被告との夫婦関係が破綻するに至ったから,婚姻破綻の原因は,原告にあり,被告は,これにより甚大な精神的苦痛を被ったので,慰謝料は1000万円を下らない。

(3)財産分与

ア 本件不動産について

被告は,本件不動産の3分の1の持分の購入資金7380万円について,自己の預金等で充当しており,原告も,その固有の現金等で購入したものであるから,原告と被告が有する本件不動産の各持分は,各人の特有財産であり,財産分与の対象とならない。

原告が取得費用に含める不動産取得税,造作改修工事費用等は,婚姻費用であり,これにより実質的持分割合を主張するのは誤りである。

本件不動産の土地の評価額は,1億6695万円から1億8648万円の間であり,本件不動産は2億円で売れる。

イ 海外不動産について

被告は,海外不動産の購入資金について,被告の父・Hが昭和63年に死亡した際に相続した遺産の相当部分で充当したものであるから,被告が有する海外不動産の持分は,被告の特有財産であり,財産分与の対象とならない。

海外不動産の取得費は1億2000万円(120万豪ドル)であり,そのうち原告が支弁した金額は約3556万円,被告が支弁した金額は8444万円であるから,持分割合は,原告が10分の3,被告が10分の7である。仮に,被告が相続財産から支弁した金額が6300万円であるとしても,残額5700万円に相当する持分は2分の1ずつである。

原告が主張する内装費用,家財道具等は婚姻費用であり,これにより実質的持分割合を主張するのは誤りである。

ウ Dの剰余金に対する財産分与請求権

Dは,形式上は株式会社となっているが,実態は個人事業であり,原告と被告の夫婦が貸ビル業を共同で行っているものであり,この事業に対し,原告が所有ビルを出資し,被告が経営全般を担当するとの労務出資をしていたものである。このように,形式上は法人であっても,実態が個人事業であり,個人経営の域を出ず,実質的に夫婦の財産と同視できる場合には,公平の観点から財産分与の対象とするのが相当である。

Dの平成14年11月30日時点の剰余金4億2983万8395円は,婚姻当初から同日までの間に蓄積取得された財産と評価できるから,財産分与請求権の対象となる財産である。

そして,Dに対する原告の財産出資と,被告の労務出資についての出資割合を評価するに,被告が①昭和50年4月にDの貸ビル業の総括責任者に就任した以降,従業員の人事権を掌握してきたこと,②昭和47年ころにIがDを乗っ取ろうとした企てを防止したこと,③Jという取り込み詐欺を行った会社を○○ビルから追い出したこと,④バブル期に銀行から多額の借入れをせず,堅実な経営に専念し,Dの存続に貢献したこと,⑤昭和60年ころに○○ビルのエレベーターの改築工事を実施したこと,⑥昭和63年ころに○○ビルの改装工事を施工させたこと,⑦江戸川区**駅前のDの所有地をK株式会社に賃貸し安定した賃料収入を得ていること等によりDの資産充実に貢献したことを考慮すれば,原告3,被告7の割合が相当であるから,被告は,原告に対し,3億0088万6876円の財産分与請求権を有する。

第3 当裁判所の判断

1 離婚原因及び慰謝料について

(1)証拠(甲8の1,23,57,60の2,原告・被告各本人のほか,括弧書きしたもの)及び弁論の全趣旨によれば,前提事実に加え,次の事実を認めることができる。

ア 原告は,被告の2人の娘及びその家族と特段問題なく,会ったり手紙のやり取りをするなど通常の関係を保っていた(甲18,19)。

イ 平成11年12月に前提事実(6)のファックスが送信される前に,原・被告間で離婚話が出たことはなく,原告が同月23日から平成12年1月15日までオーストラリアに滞在した際にも,どちらからも離婚等の話は出なかった。

ウ 原告は,その後も,平成12年4,5月及び同年末年始も,オーストラリアで被告と一緒に過ごした。その間,被告が帰国した際には,本件不動産の自宅で原告と一緒に過ごした。

エ 被告が平成13年12月に帰国した年末から平成14年2月7日にオーストラリアに出発するまでの間に,被告が頻繁に同一の携帯電話番号に電話していたので(甲34,35の1ないし7),原告が不審に思い調査したところ,Fに電話していたことが判明し,その後,原告がオーストラリアの友人に電話で尋ねたところ,被告がFと同棲していると言われ,また,同年4月に前提事実(7)の手紙を受け取ったので,同年5月26日,被告に予告せずにオーストラリアの別荘に行き,被告とFが同棲していることを確認し,その際,被告は,Fとの不貞行為を認めた。

オ 被告は,平成14年7月,離婚問題,財産問題について話し合うために帰国した際,原告は,今後被告と一緒に生活するつもりがなかったので,被告がその所有の神奈川県逗子市所在のマンションで生活するように話し,被告は,これを了承したので,原告は,同マンションの改装費用等300万円を負担した。

カ 被告は,平成15年1月中旬,病院への通院を理由に本件不動産に戻り,そのまま居座ったので,原告は,Bのマンションに身を寄せていた。

キ 原告は,家事調停中でもあり,平成15年3月25日,本件不動産に戻ったところ,被告から足で蹴られるなどの暴行を受けて負傷し,翌日,L整形外科に受診し,通院加療約2週間を要する右鼡径・大腿近位部及び左膝挫傷の診断を受け,同年4月15日ころまで通院加療を受けた。被告は,同暴行をした際等に,「人殺し」,「泥棒」,「俺の給料を返せ」,「株を返せ」等と暴言を吐き,また,原告の衣服をタンスから引き出して散らかすなどした(甲7,20,21,59の1ないし14,乙1の1)。

(2)離婚原因について

以上の認定事実を併せ考慮すれば,原告と被告との婚姻関係は,被告とFが同棲し,不貞行為をし,これが原告に発覚したことにより破綻したものであり,これに加えて,その後の原・被告間の交渉の過程でも被告が原告に暴力を振るうなどしたことにより,完全に破綻してしまったものである。これに対し,被告の主張するような婚姻破綻の原因は何らうかがわれない。

したがって,民法770条1項1号及び5号の定める離婚原因がある。

(3)慰謝料について

ア 原告の請求について

前記のとおり,原告と被告との婚姻関係は,被告の不貞行為及びその後の暴力等により完全に破綻してしまったものであるから,婚姻関係が破綻したことについて被告に専ら責任があり,被告はこれにより原告が受けた精神的苦痛を慰謝すべきところ,本件にあらわれた諸般の事情を総合すると,原告が受けた精神的苦痛を慰謝するには1000万円が相当である。

そして,原告は,本訴で,平成14年5月26日に発覚した被告の不貞行為自体による慰謝料請求をしているものではなく,その後の被告の暴行等の行為を含めて,原・被告間の婚姻関係を破綻に至らせ,離婚せざるを得なくされたことを不法行為として慰謝料請求をしているもの,すなわち,離婚に伴う慰謝料請求をしているものと解されるから,認容慰謝料に対する遅延損害金は本件離婚判決確定の日の翌日とすべきであり,仮執行宣言も付さないこととする。

イ 被告の請求について

被告の慰謝料請求は,原告と被告との婚姻関係が破綻したことについて原告に何ら責任が認められないから,理由がない。

2 財産分与について

(1)本件において財産分与を判断するに当たっては,慰謝料請求が別途されているから,離婚慰謝料的要素は考慮の余地がなく,また,原・被告とも会社経営をしており,それぞれ相当の預貯金の蓄積があるから,離婚後の扶養の要素も考慮する必要はなく,夫婦が婚姻中に有していた実質上共同・共有の財産の清算分配としての要素が中心となり,これに過去の婚姻費用の分担,清算を考慮要素とすることになる。また,一方の特有財産の維持,管理等に他方が積極的に寄与,貢献した場合には,財産分与に当たり,このことも考慮すべきである。なお,原告と被告は,本件において,それぞれの預貯金について財産分与の対象としないことを合意しているので,双方の預貯金は財産分与の対象,考慮要素としないことにする。

(2)本件不動産について

ア 本件不動産は,原告と被告が婚姻中に共有名義で取得したものであるから,財産分与の対象となるところ,原・被告の離婚に伴い,原告の所有とするのが相当である。

イ 証拠(甲24,25の1,26の1・2,27の1ないし15,36,41,乙19の1)によれば,本件不動産購入費用として,各持分に見合うように,原告が1億4759万8000円,被告が7380万円を負担したほか,原告は,不動産取得税合計505万7100円,改修工事・家具代等1443万9110円,平成9年から平成15年までの毎年の固定資産税・都市計画税合計427万0500円を負担したこと,本件不動産の平成15年度の固定資産税等課税上の評価額は,土地が1億1516万7780円,建物が1350万7000円であること,平成14年12月時点での近傍基準地価は,1平方メートル当たり74万5000円であり,これに本件土地面積208.26平方メートルを乗ずると,約1億5515万円となること,被告が依頼した不動産業者の平成17年4月時点での最低額は,路線価が坪211万5000円で,通常実勢価格はその1.25倍の265万円で,土地価格(63坪)は1億6695万円としていることが認められる。

ウ 原告は,本件不動産の購入に関連して支出した費用及びその後に本件不動産について支出した費用の負担を考慮して登記された持分と異なる実質的持分を問題とするが,上記諸費用は,後記の婚姻費用の負担の一環として考慮すべきであり,本件不動産の評価に当たっては,当事者双方が合意の上で決めた登記された持分割合を前提として判断すべきである。

エ そして,本件不動産の評価額は,土地について約1億5600万円,建物について約1400万円の合計約1億7000万円とし,被告の持分3分の1相当額は約5667万円となる。

(3)海外不動産について

ア 海外不動産は,原告と被告が婚姻中に共同で取得したものであるから,財産分与の対象となるところ,原・被告の離婚に伴い,被告の所有とするのが相当である。

イ 証拠(甲10,11,13,の1ないし7,37,乙5,6,17)及び弁論の全趣旨によれば,海外不動産の土地の購入代金は56万9000豪ドル(税別),建物請負代金は50万4640豪ドル,合計107万3640豪ドルであったこと,当時の為替レートは,1豪ドル約100円であったこと,原告は,そのうち3556万8263円を負担したこと,その余は,被告が亡夫から相続した不動産の売却代金を当てたこと,そのほかにも,双方が家財道具の購入等をしたこと,海外不動産は,原告及び被告のほか被告の娘・Mの3名の共有とされたこと,海外不動産の現地不動産業者による平成16年12月時点での想定売却価格は145万ないし160万豪ドル,提案売出価格は165万豪ドルであること,同月30日現在の為替レートは,1豪ドル=80.64円であることが認められる。

ウ 以上によれば,海外不動産の共有割合は,原告が3分の1,被告が3分の2(M名義分を含む。)とするのが相当である。

エ そして,海外不動産の評価額は,160万豪ドルとして,約1億2900万円であるから,原告の持分3分の1相当額は約4300万円となる。

(4)Aの出資について

ア 証拠(甲38,40,被告本人)によれば,Aの出資250口は,Bに万一のことがあった場合に,同出資をめぐってBの子と原告との間で紛争になることを避けるため,Bが原告のために原告の夫である被告名義にしたもので,その贈与税は原告が負担し,その間の経緯について被告は全く関与していないこと,Aの出資1口当たりの平成15年1月31日時点での評価額は1万0707円であることが認められる。

イ 上記出資250口は,原告と被告の婚姻中に原告のために被告名義で取得されたものであるから,財産分与の対象として,離婚に伴い,被告から原告に対し分与することとするのが相当である。

ウ そして,上記250口の評価額は,約267万円である。

(5)婚姻費用の負担について

婚姻生活中の婚姻費用の負担状況は,前記のとおり,財産分与に当たって考慮要素となるところ,証拠(甲41,57,乙17,原告・被告各本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告との婚姻生活中,自宅である本件不動産の改装費をはじめ,造作・家財道具,固定資産税等を被告の持分に係る分についてもすべて負担し,食費,光熱費等の生活費,婚姻費用をほぼすべて負担していたことが認められる。

(6)Dについて

ア 証拠(甲3,28の1・2,39,40)によれば,Dの発行済株式数は18万株であるところ,その株主は,原告が14万4000株,Bが2万株で,他の1万6000株は名義株(うち4000株が被告名義)で,実質は原告のものであること,被告は,D代表取締役就任後,原告とほぼ同額の役員給与・賞与を受け,平成5年からは原告(年間給与1800万円)を上回る役員給与(年間2400万円)・賞与を受け,平成15年の退任時には,3000万円の退職金の支給を受けたことが認められる。なお,上記給与等の未払金があるとしても,被告とDとの間で精算されるべき問題である。

イ Dの実態が個人事業であるということはできるが,それは専ら原告が経営する個人事業であり,Dの有する資産は,原告の特有財産としての側面を有するというべきであるが,被告との共同事業ということはできない。

そして,被告自身,その本人尋問において,「対外的な業務,銀行に顔を出したりテナントの社長たちとお付き合いしたりというようなこと」をしていたと供述(調書11頁)しているところであり,被告が平成3年ころからオーストラリアに長期間滞在していたことに照らしても,被告の役員としての立場は原告の計らいにより被告に給与・賞与を支給するための多分に名目的なものであったと認められるものであり,被告が経営全般を担当していたこと,被告が主張するようなDの事業に特別の寄与,貢献をしたことを認めるに足りる証拠はない。

ウ したがって,Dの剰余金を財産分与の対象とすることはできず,被告に対しては,実質的な経営者である原告を上回る給与・賞与が支給されていたのであるから,被告がDの事業に多少の寄与,貢献をしたとしても,原告との間の財産分与について,被告の利益に考慮することはできない。

(7)以上によれば,本件離婚に伴う財産分与として,被告から原告に対し,本件不動産の被告の持分及びAの出資250口を分与し,原告から被告に対し,海外不動産の原告の持分を分与するのが相当であるところ,その評価額は,被告から原告に対する分与分が約5934万円,原告から被告に対する分与分が約4300万円で,約1634万円の差額があるが,Aの出資については被告は何らの出捐をしておらず,原告がその贈与税まで負担していること,婚姻費用の大半について原告が負担してきたこと,被告は原告の計らいにより原告分を上回る2400万円もの役員給与の支給を受けてきたこと等の諸般の事情を総合考慮すると,原告から被告に対し上記差額分を分与する必要はなく,他方,被告から原告に対し上記のほかに現金を分与する必要もないと判断する。

3 よって,原告の本訴請求中,離婚請求は理由があるから認容し,慰謝料請求については被告に対し1000万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却し,被告の慰謝料請求は理由がないから棄却し,財産分与として,被告から原告に対し,本件不動産の被告の持分及び被告名義のAの出資250口を分与し,原告から被告に対し,海外不動産の原告の持分を分与することとし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第44部

裁判官  杉 山 正 己

※3 横浜地方裁判所 昭和48年(タ)第54号 離婚等請求事件 昭和55年8月1日

離婚等請求事件

 

【事件番号】            横浜地方裁判所判決/昭和48年(タ)第54号

【判決日付】            昭和55年8月1日

【判示事項】            1、離婚に伴う財産分与として時価約5、000万円の宅地と金1億円の支払いを命じた事例

2、離婚に伴う慰謝料として、金1、000万円の支払いを命じた事例

 

【説明】

服飾デザイナーである原告X女と会社社長である被告Y男は、昭和三五ごろから同棲し、昭和四○年に婚姻届を了した(双方再婚)。Xは主婦としてはもちろん、Yの会社のデザイナーとして一定の役割を果した。ところが、Yは、昭和四六年ごろ愛人を作つて別居し、Xを顧みなくなつた。Yはその他にも何人かの女性と関係があり、Xに暴力を加えたこともある。

そこで、Xは、離婚原因として、不貞行為・悪意の遺棄・婚姻を継続し難い重大な事由の三点をあげて離婚を請求し、あわせて、時価約五、○○○万円の宅地と金二億九、三一二万七、九二三円の財産分与、金一、○○○万円の慰謝料、金一、○○○万円の弁護士費用を請求した。

これに対し、本判決は、右宅地と金一億円の財産分与、金一、○○○万円の慰謝料、金一五○万円の弁護士費用について、これを認容した。

本件については、新聞でも、「離婚料一億六、○○○万円、日本で最高額」と報道されたとおり、公刊された限りでは最高額の離婚給付を命じたものといえよう。一つの事例として紹介する。

(関係人名は仮名)

【判旨】

一 〈証拠vを総合すると、原告と被告は昭和四○年一月二七日婚姻の届出をした夫婦であつて、両者間には子供がいないことが認められる

ニ 原、被告の共同生活の状況について

〈証拠〉によれば次の事実が認められる。

原告は、大正九年二月二九日加藤清彦、サカK嫁の長女として生まれ高等女学校卒業後堀内正と結婚し子供を二人もうけた。昭和二○年堀内正が戦死し、生計を立てるため洋裁、服飾デザインを学び、その技術を修得した。昭和二三年終りごろから○○県にある洋裁学校や○○県立農業高等学校に勤務し洋裁や服飾デザインを教えていたが、昭和二七年四月には上京し、東京池袋にある△△デパートにデザイナーとして就職した。昭和二八年五月には東京銀座にある○○デパートに勤務するようになり婦人服のデザインを主に行つていた。昭和三四年二月ころから当時○Oデパートに商晶を入れていた被告が経営する殊式会社甲野から頼まれ右会社の嘱託デザイナーとなり、週一日程右会社に勤務しブラウスのデザイン等をするようになつた。

他方、被告は、大正二年九月一五日甲野武一郎、あや夫妻の二男として生まれ、商業学校を卒業後、横浜で繊維関係の会社等に勤務し、昭和一四年ごろ甲野ユキ子と結婚して三人の子供をもうけた。その後昭和一八年ごろ徴兵され南方に派遣されたが昭和二一年には復員した。復員後放出物資等のブローカーを始めたが昭和二五年ごろから過労などのため肺結核に罹り、手術を受け、二年間療養生活を送つた。回復後の昭和二七年一○月ころ、絹、人絹によるマフラー、ブラウス、の製造、販売を目的とする株式会社甲野を資本金一○○万円で設立し、以後今日まで、その経営にあたつている。昭和二七年ころ妻ユキ子が不貞行為をしたことから不仲になり昭和二八年一一月には別居することになつた。別居後、被告は大島秋江と同棲するようになり同人との間に子供を一人もうけ、その子を認知した。右大島とは被告が原告と知り合うころには別れており、また、妻甲野ユキ子とは昭和三九年九月一七日協議離婚をしている。

原告が、株式会社甲野に勤務し始めたころ、被告は、当時同棲していた大島秋江の行状に不満をもち、その関係が悪化していたこともあつて、次第に原告に引かれ求愛するようになり、また、原告も被告とつきあい、被告の身上話などを聞くうち被告に同情するようになり、被告の求愛を受け入れ、昭和三五年ころには肉体関係をもつようになつた。昭和三六年一○月ころには、原告が、その子供二人と暮していた東京都品川区○○Oのアパートで同棲するようになつた。その後右○○○のアパートは手狭であつたため横浜市○○区△△△に土地、建物を求め昭和三七年一二月にはそこに移りすんだ。被告は原告と同棲を開始するようになつたころには大島秋江とは別れており原告とは被告が先妻甲野ユキ子と離婚した後、挙式して昭和四○年一月二七日婚姻の届出をした。

原告は、被告と肉体関係を結ぶようになつてから被告に対する愛情も加わり、被告が経営する株式会社甲野のブラウスのデザイン等の仕事により一層はげんだ。そして、同棲開始後もデザイナーとしての仕事を続けていたが、被告が前に肺結核を患つたこともあつて病弱であつたため、その面倒や、家事を見るため昭和三八年暮で仕事をやめ、昭和三九年ころからは家事に専念するようになつた。

原、被告の婚姻生活は、円満のうちに過ぎ原告は、一般的な家事の外、被告の健康回復のため漢方療法、食事療法、マッサージなどを施し、被告が経営する株式会社甲野の商晶の展示会の手伝い、商品のデザインについての助言、就業規則の作成、従業員の募集、従業員の見合、結婚の仲人、住居、育児の世話などをし、被告の仕事を手伝つたし、被告はその仕事柄、自宅に来客が多かつたが、それをもてなし、被告の親族とのつきあいも一応順当にこなしていた。また、被告はワンマンな性格を有していたがこれにもうまく対応していた。

他方、被告も家屋の増築、家具、調度品、服飾品の購入、原告を保険金受取人とする生命保険への加入等、原告の妻としての普通の要求を満していたし、被告が株式会社甲野から取得する給与も原告に手渡していた。原告の腰の治療のため外国の病院を訪れさせたこともあつた。そして、原告の二人の子供とも大体うまくやつており原、被告及び原告の子供一人と三人でアメリカヘ旅行したこともあつた。

ところで、被告は昭和四二年夏ごろから浮気心を起し当時株式会社甲野の従業員であつた乙山春子と不倫な関係を持つようになり以後昭和四七年ごろまでの間一週間に一度ぐらいの割合で肉体関係を継続していた。右乙山春子は原告の遠縁に該り、原告の紹介で右会社に入社し、原、被告の住居にも何回か遊びに来たこともあり、原告とも親しかつた。被告は、その性格としてワンマンで自分の考えを人に押しつけたり、金銭面で細かい所があつたが、乙山春子と関係を持つようになつてから、その横暴さを増しささいなことでも立腹するようになり、原告に対し暴行を加えることもあつた。そして、原告に渡す被告の給与の額も少くなつたが日常生活に困るという程ではなかつた。また、近隣とのつきあいにおいて、いやな面は原告におしつけるようになつた。以前には、原告が株式会社甲野に顔を出したり、右会社の社員旅行に同行することに異議を述べずむしろ喜んでいたが、だんだんと、いやな顔をするようになり、また結婚式等に原告が同行するのを拒否するようになつた。原告が家事に専念するようになつてからも税金対策上株式会社甲野の従業員としてあつかい給与も出していたが昭和四四年三月には、それも打ち切り、原告を株式会社甲野の役員にするという約束があつたがこれも実行せず、また原告に対し遺留分の放棄を求めたこともあつた。その他、被告は、近所に住む女性を連れてきて、原告の眼前でふざけあつたりしたこともあつた。

原告は、被告の態度の変化や、被告には女性がいるといううわさを耳にしたことから被告が浮気をしているのではないかという疑を持つた。そして、被告に対し何回か問いつめたことがあつたが、被告は否定し、このことを原因として夫婦げんかで起こり被告が原告に対し暴行を加えたこともあつた。これに反し原告が被告を虐待したことなどはなかつた。しかし、昭和四五年暮ころまで原、被告の婚姻生活は平穏を保つていた。原告が被告と乙山との関係について昭和四五年の初めころからうすうす気がついていたが、具体的に知つたのは同年一二月ころであつた。原告はそれを知つてショックを受け叔母の田中マサに原、被告の住居に来てもらい、立会のうえ、帰宅した被告に対し被告と乙山との関係について問い質した。しかし、被告は、乙山との関係を強く否定していた。被告に対する原告の詰問は被告が住居にいる間常にというほどではないが続いていた。

被告は一原告の詰問にいや気がさし、昭和四六年一月五日朝株式会社甲野に出社するといつて住居を出、以後二回、被告の洋服を取りに家にもどつたのみで、その後は先妻甲野ユキ子との間に生まれた甲野一郎の住居に居住し原告の住居にはよりつかなくなつた。同月中旬ころ被告が株式会社甲野の大阪支店に出張した際病気になり、原告がその看病のためおもむいたが、被告は、立腹し結婚指輪などをなげつけたりして原告を追い返し、また、同年二月六日被告が洋服を取りに帰宅した際、原告が同居を求め、帰宅しない理由をたずねたが、籍を抜けば戻るというのみで他に何らの説明もしなかつた。被告はその後、被告と甲野一郎の家族が住むための住居を別の場所に求めることを計画し、一郎とともに、土地を購入し、その土地上に建物を新築し、そこに移り住み、原告と同居する意思を捨て離婚することを望むようになつた。

被告は、昭和四七年三月三一日洋服を取りに、原告の住居を訪れたが、原告がこれを渡さず乙山の話を持ち出したため口論となり、激昂して、原告を畳の上に引倒したり、手拳で頚や肩などを一○数回殴打したり足蹴にするなどの暴行を加え、その結果原告に全治二週間を要する全頭部、左肩、左上腕、背部、腰部打撲傷、頚部打撲傷及び小裂傷、右前腕、左手捻傷等の傷害を負わせた。原告は被告の右暴行に対し多少は反抗bたものの被告の一方的なものであつた。原告は翌日、被告を傷害罪で告訴し、被告は同年七月七日神奈川簡易裁判所において罰金七○○○円に処せられた。原告が受けた傷害は比較的軽いものであり、治療のため一回病院に通院しただけであつたが、それまでに、右のような仕打を受けたことがなかつたため驚愕し、それまでは別居後も被告との婚姻の継続を望んでいたが右暴行を受けた後は、場合によつては、離婚も止むなしと考えるようになつた。

被告は、昭和四七年四月ころから丙原夏子と不倫な関係に陥り一か月に一度くらいの割合で約一年間肉体関係を有していた。右丙原は、原告が松屋デパートに勤務していたころの同僚で、原告とは同郷でもあり、親しく、原、被告の住居に遊びに来たこともあつた。また、被告には、原、被告が共同生活を送つていたころから他の二、三の女性と関係があるといううわさがあつた。

被告は、原、被告が別居するようになつてから、原告の生活費として昭和四六年一月分、金二二万四三五○円、同年二、三月分各金一五万円、同年四月分金一○万円を支払つたが、以後その支払をしなくなつた。そのため原告は、同年八月ころ横浜家庭裁判所に生活費の支払についての調停を申立てた。それとあい前後して被告も離婚の調停を申立てた。その調停の席で、原、被告間に調停継続中一か月金一○万円を支払うという申合せが出来被告は同年五月分から昭和四七年一二月分までこれを支払つた。しかしそのころ右調停がいずれも不調で終つたため、その後の支払をしなくなつた。原告は昭和四八年ころ当裁判所に生活費の支払を求める仮処分を申請し、仮処分決定を得て同年一月分から昭和四九年八月分まで一か月金一○万円の割合による金員を受領した。それ以後の分については昭和四八年ごろ原告が横浜家庭裁判所に申立てた婚姻費用分担の調停の席で、原、被告間に一か月金一○万円の割合による金員を支払う旨の申合せが出来、被告は以後これを支払つている。そして右調停は、審判に移行し昭和五○年三月五日横浜家庭裁判所において審判が言渡され婚姻費用の分担額がきめられ以後その額を支払つている。

原告と被告の別居期間は約一○年となり、別居後原告と堀内正との間に生まれた子供らは全て結婚し別世帯をもつており、原、被告の間には子供はおらず、原告は原告の実父とともに原告の住居で被告からの仕送りを頼りに生活している。現在、原、被告ともに離婚を望んでいる。

〈証拠判断略〉

以上によれば被告は円満な夫婦生活を続ける努力を怠り不貞行為を継続し正当な理由kτいのに自ら家を出て原告と別居を続けているものであつてこれがため原、被告間の婚姻はもつぱら被告の責に帰すべき事由により破綻し回復の見込がないものというべきである。

被告の前記行為は、民法七七○条一項一号の「配偶者に不貞な行為があつたとき。」及び同二号の「配偶者を悪意で遺棄したとき。」に当ると共に、被告間の婚姻関係は同五号の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当するから被告との離婚を求める原告の請求は理由がある。

三 慰謝料について

前記認定したとおり、被告の不貞行為と悪意の遺棄及び被告の責に帰すべき事由により婚姻が破綻したことにより原告が相当の精神的苦痛を被つたことは推測するに難くなく前記認定の諸事実に本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、右苦痛を慰謝するためには金一○○○万円が相当である。

四 財産分与について

〈証拠〉によれば次の事実を認定できる。

被告は昭和二七年頃、横浜市○区△△町四丁目四四番宅地二一八・一四平方メートルにつき、賃借権を取得した。もつともこの土地は、戦前から先妻甲野ユキ子の父が賃借権を有しており、戦後被告が経営していた甲野商店が利用していたものであつたが、右甲野商店を昭和二七年法人としたのをきつかけに被告が賃借人となつたものであつた。右土地上には、以前から同所家屋番号一六番の三の建物がたつており、また、登記簿上昭和二八年には同所家屋番升二七番の建物が、昭和三四年には同所家屋番号一六番五の建物がたてられたことになつているが実際は、数度増改築をなし、その結果一つの建物の形態をなしている。この家屋を被告は、株式会社甲野に賃貸し賃料を得ており、また、株式会社甲野はこの建物を本店として設立以来利用していたが、昭和五三年他に本社を新設し、そこに移転したため、現在は、使用していない。右土地の賃借権の価額は少なくとも現在金二六○○万円はし、また、右各建物の価額の合計は金二○○万円を越えている。

被告は、昭和三二年九月ころ代金約金一八○○万円で大阪市○区△△町通二丁目六○番宅地一五六・二九平方メートルを購入した。この代金は、銀行から借入れて支払い、右借入金については月々返済をしていた。この土地上には木造の建物が四戸ほど建つていたがそれも一緒に取得し、右土地、建物を株式会社甲野に賃貸していた。被告は昭和四二、三年ごろ右木造建物を取壊し、建築費約金一二○○万円で鉄骨造陸屋根三階建倉庫兼寄宿舎一棟、床面積一ないし三階とも一二四・六三平方メートルを建築した。前記士地の購入のための借入金の返済は大体このころまでには終つていた。右建物の建築費についても銀行から借入れて支払い、その借入金の返済は右建物及び前記土地を株式会社甲野に賃貸し、被告が受領する賃料でまかない、建築後四、五年内に終了した。前記土地の時価は少なくとも金四五○○万円はし、また、右建物の家屋課税台帳による昭和五四年度の評価額は金一○二八万九○○○円であつて少なくとも右評価額程度の価値を現在有している。

被告は、昭和三七年一月二五日、原被告の住居を建てる目的で横浜市○○区△△△二丁目二四二三番、宅地二五五・四○平方メートルを代金約金五五○万円で購入した。右代金のうち金三○○万円については、原、被告が同棲する以前から有していた横浜市○○○区△△町の賃借権つきの建物を売却し、その支払にあて、その余の残金については他からの借金や、被告の収入、又は、被告の有していた預金から支払つた。

原、被告はその後、右土地上に横浜市○○区△△△二丁目家屋番号二四二三番木造焼付塗装鉄板葺二階建居宅一棟床面積一階一○二・四五平方メートル、二階二六・四四平方メートルを建築費約金四二○万円で建築し居住するようになつた。右建築費の支払は、原、被告が同棲を開始したとき被告が原告に渡していた金約一○○○万円の被告の定期預金の一部をこれにあてたほか、被告が他から借用した金や、被告の収入から支払つた。被告は右建物を建築する当初から原告に与えるつもりであつたが贈与すると贈与税がかかるため原告自身が建築したことにし、請負契約や、請負代金の支払、保存登記等も全て原告の名前でおこなつた。そのため被告が取得した前記土地につさ原告になんらかの権利を設定する必要があつたし、また、右土地もゆくゆくは原告に檜与するつもりであり、その税金対策のためからも右土地の内三○坪につき賃借権を設定したこととし、のちのちは賃借権を土地全部に拡大することとした。しかし現実には原告が被告に賃料等の対価を支払つたこともなかつた。被告は、本件訴訟に先だつ調停の時から右土地を原告に財産分与することについては了承しており、また、前記建物が原告の所有であることも認めている。右土地の土地課税台帳による昭和五四年度の評価額は金一二三三万八三七四円であるが、右土地は東横線○○駅の近くの閑静な住宅街にあり、その位置環境等諸般の情況から現在の時価は少なくとも右評価額の四倍以上の価値がある。また右建物の昭和五四年度の家屋課税台帳による評価額は金一七五万五九七○円であり少なくとも右家屋は右評価額程度の価値を有している。

被告は、昭和三七、三八年ごろ横浜市○区△町所在の土地、面積約八五坪を購入した。その代金は明確ではないが、昭和四五年には右土地を坪あたり金二○万円ないし金三○万円総額約金二○○○万円で売却し、その代金は被告が銀行預金とした。右預金は多少の増減はあつたが、大体そのまま現在も残つている。被告は、昭和三九年九月一七日先妻甲野ユキ子と離婚しているがその際被告の預金の三分の一ないし二分の一ぐらいの額である金三○○○万円の預金をユキ子に与えた。その他被告は昭和二八年二月ユキ子と別居するに際しその額は明確ではないが若干の預金と○○OO○株式会社等の株式を四○○○ないし五○○○株与え、また、被告がユキ子と共同生活を送つている間に購入し、ユキ子の名前で登記し、居住していた横浜市○区△△△所在の約五○坪の土地賃借権の付いた建物をそのままユキ子に居住させ、ユキ子の所有とすることにした。右株式はその後増資によつてふえ、ユキ子は一万一○○○株を有することになつた。また、被告はユキ子と別居後に右建物をユキ子や、被告ユキ子との間に生まれた子供のため増築してやり約七坪ほど広くした。ユキ子は、後に右建物の所有権を取得している。その他、被告は、ユキ子と離婚するまでの間月々、五、六万円の生活費を仕送りしていたし、離婚後は、ユキ子に対する仕送りはしなくなつたが被告とユキ子との間に生まれた三人の子供の中の一人に月々二万円ぐらいの仕送りを数年間続けていた。またj右子供達が結婚するに際してはそれぞれ結婚費用を出している。右子供達の一人である甲野一郎が昭和四○年結婚した際には土地賃借権の付いた建物を購入し、右一郎に与え、居住させていた。被告がユキ子に対し離婚の際多額の預金を与えたのは、被告が戦後株式会社甲野の前身である甲野商店を経営するに当り、ユキ子の父親から融資を受けていたことや、被告がほとんど無一文の時代に結婚し、三人の子供をもうけその子供達を養育するかたわら右甲野商店の仕事も手伝い、また、被告が結核で入院していた間右甲野商店の経営を、ユキ子やユキ子の父親がしていたことや、当時すでに原、被告は同棲しており原告が被告に入籍を迫つていたことによるものであつた。

被告は、先妻、甲野スミ子と別居後横浜市○○区△△△町に賃借権つき家屋を購入して大島秋江と同棲していたが、その後右秋江と不仲になり原告と同棲を始めたころにはすでに別れていた。右秋江と別れる際右○○○町の家屋を売却し、その売却代金で横浜市○○○区△△線○町駅の近くにアパートを購入し、それを秋江に与えた。その他、右秋江には、秋江が結婚するまでの間月々金一万円ぐらいを生活費として仕送りしていたが、秋江が結婚してからはその送金はやめ、かわりに被告と秋江との間に生まれ被告が認知した大島信夫のため保険をかけその保険料を月々金一万円ほど支払つていた。

被告と不貞の関係にあつた乙山春子に対しては金二○○万円や、乙山がダイヤモンドを買うための金の一部を与えたほか、肉体交渉をもつたびに多少の金員を与え、また、乙山が株式会社甲野からもらう給与やボーナスを多少増額したことがあつた。また、同じく被告と不貞の関係にあつた丙原夏子にも肉体交渉をもつたびに多少の金員を与えていた。

原告と被告は昭和四六年一月別居したが別居後、被告は前記一郎に買い与えていた家屋に居住するようになつた。右家屋は一郎及びその家族と被告が住むには手狭であつたため居住家屋を他に求めることとし昭和四六年中ごろ右一郎とともに横浜市○区△△三七番一○宅地七○一平方メートルを代金約金四○○○万円で購入した。そして、右土地上に昭和四七年三月ごろ建物を建築費金一七○○万円ぐらいで建て移りすんだ。右土地の購入代金や建物の建築費については、一郎は、昭和三九年ごろから株式会社甲野に勤務するようになり昭和四四、四五年ごろには、取締役になつており多少の信用があつたことから、一郎と被告が共同で銀行から借入して支払つた。その借入金については、一郎と被告の収入や、被告が一郎に買与えていた建物を売却した代金、被告が有していた株式を売却した代金等で月々返済し、現在はその支払を終つている。右土地については一郎が一○分の七、被告一○分の三の持分を有する旨の登記をなしており、また、右建物は未登記であり、被告は、被告と一郎が二分の一ずつ共有持分を有すると考えている。

被告は、原告と同棲を開始した時点で少なくとも金五○○○万円ないし金六○○○万円の預金を有していた。その預金の多くは無記名又は他人名義のものであつた。被告は昭和三七年には約金六○○万円、昭和三八年には金七五三万九○○○円の所得があつた旨申告していた。右期間に被告が支出したのは次のものであつた。

1 大阪市○区△△町通の土地購入のための借入金の返済少なくとも金三六○万円

2 横浜市○区△町の土地取得代金少なくとも金五○○万円

3 横浜市○○区△△町の土地、建物の取得代金九七○万円

4 税金昭和三七年度金二四○万円五五○○円、昭和三八年度金三三三万四二九○円、合計金五七三万九六九○円

5 原告に渡した生活費少なくとも金二○ユ万円

6 先妻甲野ユキ子へ渡した生活費少なくとも金一二○万円

7 大島秋江又は、大島信夫に渡した金員少なくとも金二四万円

8 被告の小遣い少なくとも金五○万円

9 その他株式取得費等右支出した金員の総合計は少なくとも約二八○○万円以上となり申告額をはるかに越えていた。右支出のうち明確に被告の預金が使用されたのは横浜市○○区△△町の建物の請負代金についてであり、その他については預金が使用されたか否かは不明確である。右期間内にも被告の預金はある程度増加していた。

被告は、株式会社甲野の代表取締役をしておりかなりワンマンに右会社を経営していたほか、右会社の商晶を販売していた被告個人の店舗を有しており、被告の収入の大部分は右会社の利益配当、給与、個人所有の店舗における売上であつた。被告が原告と共同生活を送つていた期間中、取得した収入は、申告額では金八○一六万二○○○円であつたが、実際はその額を越えるものであつた。

右会社の資本金は原、被告が共同生活を送つていた間に金四○○万円から金一六○○万円に、その売上高は金三億八九○○万円から金八億三五○○万円に、正味資産は、貸借対照表上金二二七一万四三六三即から金九三一九万ル九六五円にそれぞれ増加していた。

被告は、昭和四五年ごろ前記横浜市○区△町の土地を代金二○○○万円ぐらいで売却したが、その代金は預金とした。右預金は、多少の滅額はあつたが、ほとんどは現在も残つていた。被告の昭和四八年ごろの三和銀行及び富士銀行に預入れていた被告名義の預金は約金一九○○万円であつた。被告の取引銀行は他にもあつた。したがつて、原、被告が共同生活を送つている間にその額は明確ではないが、ある程度の金額の預金が形成された。

被告は、原告と同棲を開始する以前から○○印刷株式会社の株式七二○○株、株式会社△△屋の株式一八○○株、○○紡績株式会社の株式一二五○株、株式会社△△製作所の株式六○○○株を有していた。その後、被告は、原、被告が共同生活を送つている間に有償又は無償で右各会社の株式を取得した結果、原、被告が別居した時点では○○印刷株式会社の株式については四万○八○○株増加して、四万八○○○株に、株式会社△△屋の株式については、一二○○株増加して三○○○株に、○○紡績株式会社の株式については、一九九四株増加して:三四四株に、株式会社△△製作所の株式については、五八八○株増加して一万一八八○株を有していた。別居後、被告は、○○印刷株式会社の株式のうち二万株を、株式会社△△屋と株式会社△△製作所の株式についてはその全てを売却した。そして、昭和五三年ごろには○○印刷株式会社の株式は四万四七二一株を、○○紡績株式会社は三三七四株を有していた。昭和五四年九月二八日の終値で○○印刷株式会社の株式は一株金四九八円であり、株式会社△△屋の株式は一株金:二六円であり、○○紡績株式会社の株式は一株金一一九円であり、株式会社△△製作所の株式は一株金三四二円であり、仮に原、被告が共同生活を送つている間に被告が取得した株式が残つているとするとその増加した株式の時価の総額は少なくとも金二三○○万円である。

株式会社甲野は、昭和二七被告が個人で経営していた甲野商店を法人にしたものであり、設立当初の資本金は金一○○万円であり、また、商号も株式会社甲野商店と称していたが昭和四一年に変更して株式会社甲野と称するようになつた。被告が個人商店を経営しはじめたころ従業員は、三名ないし五名ぐらいであつたが、法人にしたころには、二○名近くの従業員がいた。そして、原、被告が同棲を始めたころには四○名を越え、昭和四○年で五○数名、昭和四三年で七○名、原、被告が別居を開始した昭和四六年では約八○名であり、現在では一○○名を優に越えている。右株式会社甲野の総売上は、原、被告が同棲を開始した昭和三六年度で金三億八九○○万円、昭和四○年度で金六億○一○○万円、昭和四六年・度で金八億三五○○万円と順調に伸び昭和五○年度では金二九億円と飛躍的に増加したが、その後多少売上が落ちた。しかし、なお金三○億円を越える売上がある。株式会社甲野はその売上が伸びるに従い資本も増加し、設立当初金一○○万円であつたが昭和三一年に金二○○万円昭和:三年には金三○○万円、昭和三三年には金四○○万円、昭和四一年には八○○万円、昭和四三年には金一六○○万円、昭和五二年ごろでは金三二○○万円になつていた。被告は、原、被告が同棲を開始した昭和三六年には右会社の発行済株式総数八○○○株のすべてを有していた。そのうち、二○○○株は被告名義のものであり、他の六○○○株は、他人名義であつた。そして原、被告が別居を開始した昭和四六年において、右会社の発行済株式総数は、三万二○○○株であつたが被告はその全部を有していた。その内一万七三○○株は被告名義の株式でありその余は他人名義のものであつた。被告は、昭和三九年ごろ入社し、昭和四四、五年ごろ取締役になり昭和四七年には被告とともに右会社の代表取締役になつた被告の長男甲野一郎を自己の後継者と目し、徐々に右会社の実権を与え、そのため原、被告が別居後被告の有していた株式を分け与えた。また、右会社の労務政策から、右会社の役員や、功労のあつたものに株を与えていた。昭和五二年ごろには右会社の発行済株式総数は、六万眩○○○株であつたが被告名義の株式で約二万四○○○株、それに他人名義の株式を加えると発行済株式総数の約半数が被告が有するものであつた。被告が右会社の株式の総数を全部有していた間、被告は右会社の実権をにぎりかなりワンマンな経営を行つていた。株主総会は開かれたことはなかつたし、利益配当などもおこなわれず、右会社が上げた利益についてもかなりあいまいに使用されていたが帳簿上は一応整つていた。株式会社甲野は昭和二○年代は個人企業の色彩が強かつたが昭和三○年代に入つてからは会社財産も充実して来、昭和四六年ごろからは株主総会や取締役会も開催し年二、三割の利益配当を継続してきている。そして、少なくとも原、被告が同棲を開始した昭和三六年ごろには銀行筋では、被告と右会社を同一視することなく別個のものとして取引が行なわれ、現在においては完全に独立した人格となついる。

被告は、前記のとおり原、被告が同棲を開始した時点で株式会社甲野の発行済株式総数八○○○株を有しており、別居した時点では発行済株式総数三万二○○○株を全て有していた。したがつて、原、被告が共同生活を送つている間に被告が取得した右会社の株は二万四○○○株であつた。また、原、被告が共同生活を送つていた間に増加した株式会社甲野の貸借対照表上の正味資産の額は金七○四八万五六○二円であつた。また、昭和四六年当時右会桂の株式一株の表象している貸借対照表上の正味資産の額は金二九一二円であつた。その後右会社の売上が飛躍的に伸びたこともあつて昭和五三年度の貸借対照表上の正味資産は五億一一六五万四九六○円であり、昭和五四年における右会社の株式一株の評価額は少なくとも金四○○○円を越えている。

被告は、原告と同棲を開始する以前から○○カントリークラブ、△△カントリIクラブ、○○○○カントリークラブのゴルフ会員権をもつていたが、原、被告が共同生活を送つている間に△△△△カントリークラブ会員権を購入した。右ゴルフ会員権のうち○○○○カントリークラブの分については昭和四二年被告の長男甲野一郎に与えたが、その余は現在も有している。現在○○カントリークラブの会員権は、金七○○万円以上の価値があり、△△カントリークラブの会員権は金一六○○万円であり、また、△△△△カントリークラブの会員権は少なくとも金一○○万円以上の価値がある。そして一郎に与えた○○○○カントリークラブの会員権を被告が有するとすれば現在少なくとも金一一○○万円の価値を有していたはずであつた。

原告は、株式会社甲野に昭和三四年四月嘱託として入社し週に一回勤務するようになつたが、そのころ原告のデザインした衣服が新聞等に紹介され、その技能もかなりなものであつた。そして、原告の株式会社甲野における仕事振りは熱心であり、週一回の勤務では足りず大低、仕事を家に持ち帰り徹夜ですることもあつた。また、原告一人ではデザインの仕事が追いつかなかつたため、同じデザイナーである小山優子を入社させ、右会社のデザインを行なわせた。被告と肉体関係を持ち同棲するようになつてからは、被告に対する愛情も加わりますます熱心に仕事にはげみ、デザインの仕事のほか縫製、切断の下請の確保、その指導、会社の商晶の展示会等の仕事に精を出し、その結果右会社の商晶の晶質を向上させ、売上も上がつた。株式会社甲野は、その後順調に伸び取引先も増したが原告が関与していたブラウス部門は右会社の総売上の二割ぐらいをしめている。原告は右会社の発展にデザイナーとして貢献はしたが、自己の仕事としてなしたものであり、また、会社の発展の多くの部分は被告の手腕や、右会社の従業員の働きによるものであつた。

原告は、被告と同棲を開始したころ△△デパート、株式会社甲野の他二、三の会社のデザイナーをしていたし、また、戦死した先夫の公務扶助料を受けており合計で金一○万円を越える収入があり、当時の婦人の収入としては高額な収入を得ていた。また、被告と同棲開始後は被告から、被告の給与を受取つていたがその額は明確ではない。昭和三九年ごろからはデザイナーの仕事は全てやめ、家事に専念するようになつたが、株式会社甲野については税金対策上稼働していることとし、昭和四四年の終りころまで給与を得ていた。公務扶助料については被告と婚姻することによつて失つたが、もし現在も存するとすれば少なくとも年額約金一五○万円にはなつている。その他原告の収入としては、東京都○○区△△△のアパートを他に賃貸しその賃料があつた。

原告は、家事に専念するようになつてからも株式会社甲野の従業員の面倒をみていたし、被告の親族とのつきあいも大体無難にこなしていたほか、被告が加入しているライオンズクラブの関係でのつきあいにも参加しライオンズクラブ主催の交換学生を自宅に招待したこともあつた。また、被告の来客に対してもうまく対応していた。そして被告は以前結核にかかり助骨を六本切除する手術を行つたことがあつたため病弱でありその看護に意を尽した。現在、原告は、横浜市○○区△△△二丁目の自己所有の家屋に居住し、原告所有の△△△のアパートは、原告の子太E住まわせており、被告から送られる生活費の他は収入は存しない。

〈証拠判断略〉

以上の事実、前記記載の事実及びその他本件にあらわれた一切の事情を考慮し、本件離婚に伴う財産分与としては、慰謝料については先に判断したのでこれを除き、夫婦財産の清算及び離婚後の扶養等として、被告は、原告に対し別紙物件目録記載の土地の所有権を移転し、これを原因とする所有権移転登記手続をなし、かつ金一億円を支払うべきである。

五 弁護士費用について

原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は原告ら代理人に本件訴訟を委任し、着手金報酬金合わせて金一○○○万円を支払う旨約したことが認められるところ、本件事案の性質難易、認容額その他諸般の事情を考慮し、原告に金一五○万円の弁護士費用を認めるのを相当とする。

六 結論

よつて、原告の本訴請求は、原、被告の離婚を求め、離婚による財産分与として金一億円の支払を求め、かつ、別紙物件目録記載の土地所有権を移転し、これを原因とする所有権移転登記手続を求める部分、及び慰謝料金一○○○万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日であることが記録上明白な昭和四八年五月二三日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金し支払を求める部分、及び弁護士費用金一五○万円及びこれに対する本判決言渡の日から民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその範囲でこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条本文、八九条に、仮執行の宣言につき同法一九六条にそれぞれ従い、主文のとおり判決する。

(下郡山信夫 松井賢徳 姉川博之)

※4 大阪地方裁判所 平成10年(ワ)第7687号 慰藉料等請求事件 平成11年3月31日

慰藉料等請求事件

 

【事件番号】            大阪地方裁判所判決/平成10年(ワ)第7687号

【判決日付】            平成11年3月31日

【判示事項】            不貞の相手方に対する妻からの慰藉料請求とともに申し立てられた、夫との同棲の差止請求が棄却された事例

 

主   文

 

一 被告は原告に対し、金三〇〇万円及びこれに対する平成一〇年八月六日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

二 原告のその余の請求を棄却する。

三 訴訟費用はこれを三分し、うち二を原告のその余を被告の負担とする。

四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

 

理   由

 

第一 請求

(1) 被告は、原告に対し、金一二〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成一〇年八月六日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2) 被告は、原告と甲野太郎との婚姻が継続している間、甲野太郎と同棲又は会ってはならない。

第二 事案の概要

一 争いのない事実

原告と訴外甲野太郎(以下、「太郎」という。)は、昭和五〇年九月九日に婚姻した夫婦であり、原告、太郎及び被告のいずれも公立学校の教師である。被告は婚姻していたが、平成元年に夫が死亡した。

昭和五四年ころ、被告と太郎は同じ小学校に勤務するようになり、それから間もなく交際するようになり、現在に至っている。この間、被告は、被告名義の携帯電話や銀行キャッシュカードを太郎に使わせるなどしていた。

平成一〇年五月一七日、原告、太郎及び被告とで話し合いがされ、原告は、被告が太郎と今後交際しないよう念書の差入れを要求したが、被告はこれを断った。その後、太郎は原告と同居していた自宅を出て、原告と別居するようになった。

二 争点

(1) 被告と太郎との間に肉体関係があったか。

(ア) 原告の主張

被告と太郎は、肉体関係を持っていた。太郎もそのことを原告にしばしば話している。また、太郎は被告宅に泊まるなどしている。

(イ) 被告の主張

被告と太郎は、当時の被告の夫の病気や、太郎と原告との夫婦関係がうまくいっていないことの悩みをお互いに相談するうちにお互いに愛情を持つようになったものであり、その関係はいわゆるプラトニックなものにとどまっていた。

(2) 被告に対して太郎と会うことや同棲することの差止めを求めることが許されるか。

(ア) 原告の主張

被告は、太郎の不貞の相手方となり、将来も同様の行為を継続する高度の蓋然性がある。原告は、これにより著しい精神的苦痛を被るおそれがあるから、人格権又は民法七〇九条に基づき、これを差し止める権利を有する。

(イ) 被告の主張

原告と太郎の夫婦関係は破綻しており、また原告は太郎との離婚を決心している。原告が被告と太郎の交際を禁ずることを求めるのは権利濫用であり、被告と太郎の人格権を損なうものとして認められない。

第三 争点に対する判断

一 争点(1)(不貞の有無)について

(1) 事実経過について

甲具乙1、原告及び被告各本人尋問の結果、弁論の全趣旨並びに後掲各証拠によれば、次の事実が認められる。

(ア) 原告と太郎は、昭和五〇年に婚姻し、同五一年に長女を、同五四年に長男をもうけている(甲1)。被告は昭和五〇年に婚姻し、同五二年に長男をもうけたが、夫は平成元年に死亡した。

(イ) 太郎は、昭和五四年に被告が当時勤務していた小学校に赴任し、間もなく、太郎と被告の交際が始まるようになった(甲5)。

昭和六二年四月に被告と太郎が宴会の後に朝帰りすることがあった。これについて被告の夫から原告方に電話があり、被告が太郎と宿泊したのではないかとの話であったため、原告が被告に太郎とホテルに宿泊したのではないかと電話で間いただし、被告はこれを認めた(甲11)。

被告は、遅くとも平成元年ころから自己名義の銀行キャッシュカードを太郎に手渡し、これを自由に使わせていた(甲4、9)。また、自己名義の携帯電話を太郎に渡し、メッセージを入れるなどもしていた(甲10)。

(ウ) 太郎は、被告と肉体関係があることを原告に対しても述べたり、被告と原告を比べるような話をしたりしていた。

そして、平成九年一一月ないし一二月ころ、太郎は原告に対し、離婚してほしいと申し向けるようになった。そこで、同一〇年三月終わりころ、太郎の両親が来阪して太郎と話しあうなどした結果、太郎は被告と別れる旨述ベた。

ところが、同年五月一四日、太郎が深夜になって被告の運転する車に乗って帰宅したことがあり、これを契機に原告は太郎との離婚を考えるようになった。ただ、原告としては、太郎が原告と離婚した後被告と結婚等するのは許せないと感じ、被告と太郎において結婚等しないならば太郎との離婚に応じるので、被告もその旨の書面を作成するように要求した。しかし、被告は、これに応じなかった(以上につき甲6ないし8)。

太郎は、その直後から家を出て原告と別居するようになり、原告には居住先も教えていない。なお、被告は太郎の居住先を知っており、同人の衣類を被告方で洗ってやるなどしている(甲3)。また、被告は太郎との結婚を希望している。

(2) 原告供述の信用性について

なお、被告は、(1)の事実認定の前提となる原告記載によるノート(甲6ないし8)の内容の信用性について争っている。しかし、ノートの記載内容は非常に具体的かつ赤裸々で、原告自身にとってのプライバシーや名誉に関わりかねないことについても詳細に書かれている。そして、原告本人尋問の結果とも、よく内容が合致しており、他の証拠から認められる事情にも沿った内容となっている。また、ノートの記載内容の信用性を疑わせる事情も窺えない。したがって、ノートの内容は信用できる。

(3) 不貞行為の有無について

(1) での認定事実に照らすと、被告と太郎においては遅くとも昭和六二年ころから不貞関係にあったものと認められる。

なお、これについて、被告は、太郎との間では肉体関係はおろかキスもしたことがなく、抱擁してもらったことがある程度であって、いわゆるプラトニックな関係である旨本人尋問で述べている。

しかしながら、前記のとおり、太郎においては、被告との肉体関係を認めていることが認められる。また、交際の経緯を見ても、被告と太郎との交際は両者が三〇歳前後の若いころから既に二〇年近くにわたって継続しており、両者間の関係は深いものになっていることが窺える。また、太郎も被告もそれぞれ子どもをもうけた身であっ・て当然に性経験はあり、太郎はそれなりに活発な性的欲求を持っていること(甲6ないし8)も窺える。そして、被告は太郎との結婚を希望しているところである。

他方、被告は、太郎との交際がプラトニックな関係にとどまっている理由として、原告の家族のことを考慮してのことであると述べる。しかしながら、交際の経緯や先に挙げた諸事情に照らすと、この理由は納得できるものではない。

そうすると、被告と太郎とには肉体関係があったと認められるのである。

(4) 慰謝料額

以上検討したところによれば、被告は太郎と不貞関係にあったと認めることができる。そして、不貞行為の期間が長期にわたること、最終的に太郎が原告と別居するに至ったこと、もっとも不貞関係になるに当たって被告と太郎とのいずれが主導的であったかについては明らかでないこと等、不貞行為の経過、態様及び影響等について証拠上認められる諸事情を総合的に考慮すると不貞行為によって生じた原告の精神的苦痛を慰謝する額としては金三〇○万円を相当と考える。

二 争点(2)(差止め請求の可否について)

(1) 原告は、被告が太郎と会うことについての差止めも求めているが、被告が太郎と会うこと自体が違法になるとは到底いえないから、少なくともこの部分については請求に理由がないことは明らかである。

(2) そこで、次に被告と太郎との同棲の差止めを求めた部分について検討する。

差止めは、相手方の行動の事前かつ直接の示止という強力な効果をもたらすものであるから、これか認められるについては、 後の?銭賠償によっては原告の保護として十分でなく 前の直接抑制が必要といえるだけの特別な事情のあることが必要である。

そこで、本件におけるそのような情の有無についてみると、原告と太郎は婚姻関係こそ継続しているものの、平成一〇年五月ころから太郎は家を出て原告と別居しており、原告に居 を連絡してもいない。これに加えて、先に認宀した経緯をも考慮すると、両者間の婚姻関係が平常のものに復するためには、相当の困難を伴う状態というほかない。そして、原告もまた太郎との離婚をやむなしと考えてはいるものの、太郎が被告と同棲したりすることはこれまでの経緯から見て許せないということから太郎との離婚に応じていないのである。

そうすると、今後被告と太郎が棲することによって、原告と太郎との平和な婚姻生活が害されるといった直接的かつ目、的な損害か生じるということにはならない。同棲によって侵害されるのはもっぱら原告の精神的な平和というほかない。このような精神的損害については、同棲が不法行為の件を備える場合には損害賠償によっててん補されるべきものであり、これを超えて差止請求まで認められるべき情があるとまでは言えない。

よって、原告の差止め請求については理由がない。

(裁判官小林宏司)

慰謝料の減額はアドバンスまでまずは気軽にご相談下さい!

0120-146-959
  • 平日:9:30~20:30
  • 土日祝:10:00~18:00
メールによるご相談はこちら

ケータイからも相談OKモバイルサイトはこちら

人気記事ランキング
  1. バナナマン日村と女子アナ神田愛花の恋に横槍!恋愛を妨害したら慰謝料を請求される!?
  2. 石田純一のドタバタ出馬問題で家族も大迷惑!?夫の奇行で離婚となった場合の慰謝料は高くなる?
  3. スザンヌと斉藤和巳が離婚。週刊誌の報道記事は浮気の証拠になる!?
  4. 不倫相手の夫を銃撃!実刑14年、慰謝料3200万円!?
  5. ヒロミに浮気疑惑!?松本伊代の勘違いだった。
  6. 続、愛之助騒動!!藤原紀香の略奪愛!?同棲相手を奪い取ったら慰謝料請求されるのか?
  7. 狩野英孝、八面六臂の大浮気!社会的制裁を受けていない場合の慰謝料は!?
  8. 葉月里緒奈、不動産会社の御曹司と離婚しジュエリー販売を手がける男性と交際!親権を放棄した場合の慰謝料相場は!?
  9. 出世男テンプレ通りの展開!?長谷川博巳、鈴木京香同棲解消で考える、長期間の同棲は慰謝料の対象になるか?
  10. 【不倫 x 覚せい剤】もしも高知東生が高島礼子と離婚になった場合の慰謝料はどうなる!?
0